6月6日(金)、森 大翔のワンマンライブ「A day of YAMATO 69/25」が渋谷のWWW Xにて開催された。この公演は、6月9日に22歳の誕生日を迎える森にとってバースデーライブの意味合いを持つもので、この時期にワンマンライブが開催されるのは2023年、2024年に続き3度目となった。今回は、年を経て、経験を増すごとに、絶え間ない変化と進化を重ね続ける彼の現在地を刻んだ同公演の模様をレポートしていく。

SEとしてヨンシーの「Animal Arithmetic」が鳴り渡る中、一人ずつバンドメンバーがステージイン。フロアから熱烈な期待感が滲むハンズクラップが巻き起こる中、満を持して森が登場。飛び交う歓声。森は、ピンスポットライトを浴びながら、まずはソロで高速カッティングプレイをかまし、その後、バンドメンバーと共に激烈なセッションを繰り広げながら、ギターヒーローとしての堂々たる勇姿を見せつけていく。「最高の夜にしましょう、よろしく。」とクールに告げ、現時点での最新曲「通過点」からライブが幕開け。衒いなく、まっすぐに響き渡る、希望のフィーリングに満ちた歌。ギターヒーローとしての一面に加え、堂々たるシンガーとしての姿を高らかに示し、続けて、「Are you ready? 東京!」「盛り上がる準備できてるかい。」とフロアを煽った上で、「ラララさよなら永遠に」へ。リフを弾きながらバンドメンバーと共に左右にステップを踏んだり、自ら拳を天に突き上げながらフロアをアジテーションしたりして、ライブ冒頭から力強く観客を巻き込んでみせる。「今日は僕のギターで全員吹き飛ばします、そして、抱きしめます。」という頼もしい宣誓の後、彼のルーツの一つであるメタルに大きく接近した超絶プレイを炸裂させ、その流れのまま「I thank myself (for all of me)」へ。歌の狭間で「後ろのほうも見えていますよ!」と呼びかけ、また間奏では、ギターをマシンガンのように掲げ、激情を乱射するかのようなプレイを炸裂させる一幕も。いつにもましてエモーショナルな響きを放っていた「台風の目」も、圧巻の名演だった。

マイクを深く握り締めながら渾身の歌声を届けた「悲しみの空の果て」を経て、MCのコーナーへ。森は、もうすぐ22歳になると前置きした上で、「東京に引っ越してから3年。」「ギターを始めてから10年。」と半生を振り返った。そして、「皆さんと音楽できているのが本当に幸せで、奇跡だと思います。」「この温かい気持ちだけは忘れたくはないと思っています。」と胸の内の想いを丁寧に伝えた。続けて、「まだまだ未熟だけど、誰かのために何かできるようになりたい。」と抱負を語り、「明日で待ってて」をアコースティックギターの弾き語りで披露。次に、「たくさんの人に支えられて今の僕がいる。」という彼の心境と重なる曲として「群青日記」を披露。1番の終わりからバンドが合流。森の歌に優しく寄り添うバンドサウンドを推進力にして、次第にダイナミックに展開していくアレンジに深く引き込まれた。続けて、アコギのボディを両手で叩くパーカッシブなプレイから「大都会とアゲハ」へ。間奏では、メンバー紹介として、それぞれのバンドメンバーがテクニカルなプレイを順々に炸裂させていく一幕も。ラテンの魅惑的なリズムに合わせて身体を揺らす森の、充実感と歓びに満ちたような眩い笑顔が忘れられない。エレキギターに持ち替えた上で、「懐かしい曲やります。」と告げ、「君の目を見てると」を披露。等身大でありながら壮大に、壮大でありながら等身大に響く歌とバンドサウンド。彼らしさが非常に凝縮された素晴らしいパフォーマンスだった。

「楽しんでくれてますか?」という問いかけに、フロアから次々と返答が送られる。森は、今回の公演について、「テーマは、とにかくお客さんに楽しんでもらうことだったので、皆さんのその笑顔が見れて本当に嬉しいです。」と告げた。そして、自らのアイデンティティであるギターについて、「最高の楽器。」と改めて伝えた上で、生まれるずっと前から今に受け継がれてきたギターを弾く時、伝統的な楽曲や、偉人たちの影が脳裏にちらつくと明かし、「それってとってもワクワクしませんか?」と問いかける。続けて、そうした偉人たちと同じ土俵に立つ上で、負けないようにするためにどうすればいいか、どんなギターを弾くことでお客さんを楽しませたいのか、について日々考え続けていることを明かした。今回の公演は、そうした創意工夫と試行錯誤の日々の現段階での集大成だ。「後半戦、とことん味わえると思います。」「バチバチにいきますよ。」その宣誓を経て、ここからライブは怒涛の展開に突入していく。

まずは、自身のルーツの一つであるトラディショナルなロックンロールをJ-POPと高い次元で融合させたような「オテテツナイデ」を披露。そうした掛け合わせは、まさに森が誇るオリジナリティであり、唯一無二のロックアクトにフロアからこの日のピークを更新するような熱い歓声が飛び交う。そして、大きなサプライズとして、チャック・ベリーの「Johnny B. Goode」のカバーが届けられる。森は、ステージ上手から下手へ駆けながら、時おり、華麗にターンを決めながら、先人への深いリスペクトを表するような全身全霊のパフォーマンスを炸裂させていく。「もっと楽しいことしたくないですか?」「では次は、森 大翔版のJohnny B. Goodeといきましょうか!」そう叫んだ森は、爆速ロックチューン「最初で最後の素敵な恋だから」を披露。フロアを満たす並々ならぬ熱狂。飛び交い続ける歓声。「大好きだぜ、みんなー!」森は続けて、2人のダンサーをステージに呼び込み、ギターを下ろし、2人と共にダンスしながら「VSプライドモンスター」を披露。ギタリストやシンガーの域を越えた、華麗なるポップスターとしての姿がとても輝かしかった。続く「アイライ」も、2人のダンサーを迎えた特別編成で披露。ミラーボールが回る中、観客は、森の呼びかけに応えて何度もジャンプを繰り返し、サビにおける〈I like!〉〈愛来!〉のコールをばっちりきめていく。熱き一体感に満ちた、極上のエンターテインメントショーだった。

ここでダンサーが退場。本編ラストは、「剣とパレット」。サビの勇壮な歌のメロディが天井を突き抜けていくように響くエモーショナルな展開に、強く心を震わせられる。アンコールでは、森がギターを弾いた後に「セイ!」と呼びかけ、そのフレーズの旋律を観客が歌う展開が何度も繰り返された。言葉を超え、音だけでコミュニケーションを重ねていく濃厚な時間だった。そして森は、「最高です。」「言いたいことは全部音楽にのっけてるんで、ありがとうしかないです。」「みんなの笑顔、また見たいな。」「みんなを喜ばせるために、またギターを弾いてくよ。」「本当にありがとう。」「最後にもう一個だけ言わせてほしい、ありがとう。」と何度も丁寧に感謝の想いを伝えた。「いつかまた会える日まで、元気で、健やかで、笑顔で過ごせるように。」そうした祈りを込めてこの日の最後にアンコールで披露されたのは、「たいしたもんだよ」。その曲名どおり、一人ひとりの観客に優しく寄り添う温かなメッセージを真摯に伝え抜いていく森の姿が、とても頼もしく感じられた。自分のためだけではなく、誰かのために。そうした深い決意が全編に滲むような、そして、彼の成長を確かに感じられる、とても素晴らしい一夜だった。

テキスト:松本侃士
写真:山川 哲矢

■2025年6月6日(金)
森 大翔LIVE「A day of YAMATO 69/25」セットリスト
プレイリスト公開中
https://yamato-mori.lnk.to/a-day-of-yamato-69-25

■森 大翔Profile

2003年6月生まれの21歳。北海道・知床 羅臼町出身。
小学6年の頃、従兄弟からの影響でギターを始める。インターネットで様々なギタリストから影響を受け培ったギターテクニックと、大自然で育まれた感性から生み出される楽曲を武器に、16歳の時にイギリス・ロンドンで行われた「Young Guitarist of the Year 2019 powered by Ernie Ball」(16歳以下のギタリストによるエレキギターの世界大会)に出場し、英国・米国など100人を対象とする審査を勝ち抜き優勝、世界一に輝く。
卓越圧巻のギター演奏と無垢な歌声、そして独創的なセンスで作詞・作曲・アレンジまでサウンドをセルフプロデュースする新世代の才能。
2021年9月、デジタルシングル「日日」でデビューし、2023年5月には1stアルバム「69 Jewel Beetle」をリリース。その非凡な才能は開花されたばかりでまだ底知れない。
2024年10月30日にはニューアルバム「Let It Grow」をリリース。2025年8月には東京、大阪、名古屋の3カ所を回る、弾き語りツアー、11月には東京、大阪、名古屋のクアトロを回るワンマンツアーを開催。