Shiba showed "a new form of expression" at her first solo one-man show ── Shiba's one-man live "Singing Like a Song, Heartwarming".
水曜日のカンパネラの2代目・主演&歌唱担当を務める詩羽。彼女の23歳の誕生日である、2024年8月9日。詩羽のソロ・プロジェクトとしての初のワンマンライブ『うたうように、ほがらかに』が東京・新宿LOFTにて、開催された。
先日7月3日の水曜日のカンパネラのツアーのZepp Sapporo公演にて突然発表された、詩羽のソロ始動。その知らせには多くのファンが驚いた。さらにファンが驚いたのは、その翌日に配信リリースされた1stアルバム『うたうように、ほがらかに』の音楽性が、エレクトロを基調とした水曜日のカンパネラとは全く異なる、ゴリゴリのバンド・サウンド・アプローチだったこと。
詩羽がソロで表現したいこととは、いったいどんなものなのか。ソロではいったいどんなライブを行うのか。会場である新宿LOFTには、期待に胸を膨らませた多くのファンが集まり、開演を待ち望んでいた。
定刻を迎え、バンドメンバーとともにギターを携えた詩羽がステージに立つ。すると大きな拍手と共にギターを抱えた詩羽の姿にどよめきが起きる。ライブはファースト・アルバムの1曲目を飾るポップ・チューン「MY BODY IS CUTE」からスタート。あらゆる人間を肯定するポジティブな歌詞が、会場全体をハッピーなオーラで包み込んだ。
2曲目「magichour」でロック・ヴォーカリストとしての堂々たる佇まいを感じさせ、ハンドマイクへと持ち替えてスカ・チューン「人間LOVER」へ。キュートに舞いながら“人間”という存在への愛を歌うと、次はなんと未リリースの新曲「ギャルヒーロー」を初披露し、ポップな側面を全開にしていく。
水曜日のカンパネラでは、ケンモチヒデフミが手がけるユーモラスな歌詞を、リズミカルなビートに乗せて歌うのが主なスタイルだが、ソロでは詩羽が全ての作詞を担当。彼女自身の考えや美学が歌詞に色濃く反映されており、それを自分の声で歌うからこそ、そのメッセージが真っ直ぐに届いてくるのが特徴のひとつだ。
メンバー紹介を挟んだあと、続いてのブロックでは、「メリーゴーランド」、「あとがき」、「teenager」というディストーションの効いた激しい楽曲を立て続けに披露。序盤までの明るい雰囲気を一変させ、シリアスな世界を展開する。水曜日のカンパネラでは、ポップで楽しい楽曲を届けてきた詩羽だが、これらの楽曲のように尖った部分を見せてくれるのも、ソロならではの魅力だ。
このソロの大きな魅力は、詩羽の強い歌声を感じられるところ。この日のライヴには、吉田一郎不可触世界(Bass)、BOBO(Drum)、日野ジャクソン(Guitar)という高いテクニックを持つバンドメンバーが集結。体の大きな三人の放つ演奏は力強く、楽曲に大きな迫力を生み出し、その魅力を存分に引き出していた。一方で詩羽の歌声はその迫力に埋もれることはない。詩羽のヴォーリストとしての高い表現力に感嘆する。まさにバンドとしての理想的なバランスだ。
圧巻のロック・サウンドを鳴らし終えたバンドは再びMCへ。なんと、この日誕生日を迎える詩羽のために、「ハッピーバースデー」が歌われ、ケーキを持って登場したのは、CENTことセントチヒロ・チッチ(ex:BiSH)! 突然の友人のサプライズに驚く表情の詩羽に、「おめでとう!」の声が会場中から寄せられ、会場全体は幸せな空気に包まれた。(なお、詩羽自身はサプライズが苦手なため、実はこのくだりを10回以上リハーサルでやっていたことを即座に暴露していた(笑)。)
そして詩羽とCENTは「まだリリース予定のない新曲です!」と前置きをし、R&Bを基調とした楽曲「BONSAI」をサプライズで披露。友達同士のバイブスとグルーヴが混ざり合う素敵なコラボレーションを見せた。
CENTがステージを去ったあと、椎名林檎のバラード楽曲「17」をしっとりと歌い上げる。この「17」は、昨年2023年に放送されたドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』の第5話で詩羽が披露したもの。詩羽自身、このドラマへの参加は人生の大きなターニングポイントと語っており、ソロでこの楽曲を披露することは大きな意味を持っていたのだろう。
終盤のMCで、詩羽は「毎日しんどいことばかりだよ」と本音をもらした。しかし、「しんどいことがあったとしても、ステージに立てば元気になるし、ライブでみんなに会えることがすごく幸せ」だと笑顔で語った。様々な不安や恐怖が渦巻いている昨今。そんなしんどい日々を生き抜いても、自分を解放できる「ライブ」という場所は、「詩羽」というアーティストにとって、もっとも大切なものなのだと感じることができた。
そして「トワイライト逃避行」、「deny」の2曲を熱唱。「生」と「死」という重いテーマに込められた、詩羽自身の強いメッセージが、聴く者の心を掴む。最後は「ライブは楽しく終わりたい」という言葉から、未発表の新曲「胡蝶蘭」を初披露。「恐れるな 若者たち」という強いメッセージが新宿LOFT全体に響き渡り、会場中が歓声に溢れ、詩羽のはじめてのワンマンライブ『うたうように、ほがらかに』は大団円で幕を閉じた。
水曜日のカンパネラと並行し、ソロとして新たな一歩を踏み出した詩羽。彼女はこれからも自分らしいスタイルで、新たな表現をしていくだろう。そして彼女が歌に込めたメッセージは、これからも様々な場所で人々の心に届いていくに違いない。特に、「胡蝶蘭」でも歌った若者たちは、彼女の歌を聴き、たくさんの生きる力を得ることを確信している。今後の詩羽の活躍には、期待しかない。そんな素敵なライブだった。
取材・文:西田健