5人組ロックバンド・lynch. 待望の新作『FIERCE-EP』をひっさげた夏のツアー「TOUR’24 THE FIERCE BLAZE」ツアーファイナルを迎えたTOKYO DOME CITY HALL公演のライブレポートが到着!

2024年の日本は酷暑が続き、その暑さは9月に入っても変わらないままだ。それと時を同じくして、この連日続く記録的な猛暑と共に日本中を回り、気温以上の熱いツアーを繰り広げてきたのがlynch.である。前作『REBORN』で文字通り生まれ変わった彼らにとって約一年ぶりとなるリリース作品『FIERCE-EP』を引っ提げ、<lynch. TOUR’24 「THE FIERCE BLAZE」>と題し、全国15公演を巡った今ツアーだったが、セミファイナルである大阪公演が台風の影響で延期。逆境を乗り越え迎えた中でのツアーファイナルを9月4日、東京・TOKYO DOME CITY HALLにて行った。

会場に入るなりそのセットが目を引いた。ライヴハウスでは見ることができない大掛かりなセットがステージ中央に鎮座し、早くもホール形式のライヴならではの雰囲気に胸が高鳴る。というのも、今回のツアーは序盤をライヴハウスツアー、ラスト3本をホールツアーという構成になっており、ライヴハウスの良さと、ホールの良さの両面を楽しめるツアーとなっているのだ。

定刻、開演を待ち侘びる会場の熱量が最高潮に達すると場内は暗転。前述のセット中央から晁直(Dr)、明徳(Ba)、悠介(Gt)、玲央(Gt)が順にステージインし、最後に葉月(Vo)が登場するとオーディエンスは割れんばかりの拍手で出迎える。「lynch.です。よろしくお願いします」というお決まりの挨拶を合図にツアータイトルにもなっている「A FIERCE BLAZE」でライヴの口火は切って落とされた。ホールに似合う荘厳なイントロから一気に地獄の底に叩き落とすかのような苛烈なハードコア/メタルコアナンバーで一気にボルテージを上げると、そのままlynch.の王道とも言える「UN DEUX TROIS」へ。共に『FIERCE-EP』からの選曲で、今回のツアーから披露された楽曲ではあるものの、ツアー序盤からセットリストに馴染み、以前からlynch.のライヴで演奏されていたのではないかと錯覚するほどの仕上がりだったが、ツアーを経てさらに成熟した新曲群の盛り上がりは改めて目を見張るものがある。また、既存のライヴ定番曲と並べても熱量が変わらないという点も今回のツアーがいいものになっている要因の一つだろう。

さらに、2022年に活動を再開し、今作をもって新たな制作スタイルを確立させたlynch.にとって作詞/作曲ともに共作というチャレンジングな楽曲になった「斑」では、悠介の歌唱パートにおいて大きな歓声が上がり、新たなライヴの見どころの一つとなっていたし、彼らのライヴに深みをもたらす「REMAINS」があることで、より楽曲のコントラストが際立ち、彼らの強みであるダークさ、激しさをより強く感じることができた。

これまでも、その歌で、その音で、そのライヴで、己の存在を示してきた彼らを新たに形容する言葉が今作のリードトラックにもなっている「EXCENTRIC」だろう。ニューメタルをlynch.流に落とし込むことで、これまでの“らしさ”と“新しさ”が混在する、まさしく奇抜で異様な唯一無二のロックバンド、これがlynch.である。そんなダークヒーロー然としたアティチュードを貫きながらこの日の本編ラストとした。

各メンバーがサイドプロジェクトを持ちながら活動をしているlynch.にとって、ツアーの終わりはしばしの別れを意味する。しかし、今年の年末で20周年を迎えることもあり、来年以降への活動に期待しているファンも少なくないはずだ。アンコールの折に葉月も20周年に触れ、“すごく近いうちに皆さんに発表できると思う”と発言していたが、その“近く”は予想よりも早く訪れることとなった。

大盛況のアンコールの後、スクリーンに投影されたのはlynch.の歴史を振り返るようなMVの数々。そして<lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT>の発足が発表されると、待ってましたと言わんばかりに狂気乱舞するオーディエンスに対して、プロジェクト第一弾として年末のZepp Nagoya公演、第二弾として年始の大宮ソニックシティ大ホール公演のアナウンスがなされた。また、このプロジェクトは“XX act:1”から“XX act:10”まであり、一年を通して20周年イヤーを盛り上げていくという。

この告知を受け、さらに気持ちが昂ったオーディエンスからの声に対し、ダブルアンコールで応えた5人は「止めないで一年かけてやりますから!皆さん盛り上げるの手伝ってくださいね!!」と高らかに宣言。“未来に向かって!”と前置きし、この日二度目となる「UN DEUX TROIS」を投下。正真正銘のラストナンバーとした。

5年前、彼らの結成15周年に際して<15 th ANNIVERSARY PROJECT [XV]>と題した同様のプロジェクトを発足したが、コロナ禍の影響で“[XV]act:5”で頓挫した過去がある。当時の苦い過去を塗り替えるべくリベンジの時が訪れたのだ。様々な過去を乗り越え、現在の姿をもって過去を正解としてきた彼らの次なる標的が定まった。まさに、二度目の「UN DEUX TROIS」のカウントこそ、来る20周年に向けた号令に違いない。来年は一年を通してド派手に暴れるlynch.を期待できそうだ。

(取材・文 オザキケイト)

TOUR’24 THE FIERCE BLAZE

ツアーファイナル TOKYO DOME CITY HALL公演セットリスト

M1 A FIERCE BLAZE
M2 UN DEUX TROIS
M3 THE BLASTED BACK BONE
M4 GREED
M5 斑
M6 GUILLOTINE
M7 GHOST
M8 KALEIDO
M9 REMAINS
M10 D.A.R.K.
M11 THE FATAL HOUR HAS COME
M12 EVIDENCE
M13 INVADER
M14 GALLOWS
M15 pulse_
M16 EXCENTRIC

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