映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が3月27日(金)に公開される。
日本のアンダーグラウンド・ロックを扱ったミニコミ誌「ロッキン・ドール」を通じて東京ロッカーズのムーヴメントと交差していった写真家・地引雄一の著書「ストリート・キングダム」を原作に、インディーズの誕生、オールスタンディングやロックフェスの始まりとなった1978年のパンクロックシーンを描く。
W主演の一人は峯田和伸。監督に田口トモロヲ、脚本に宮藤官九郎、音楽に大友良英と、2003年公開の映画『アイデン&ティティ』の面々が再集結。音楽の衝動、青春のきらめき、そして若者たちの葛藤を、再び鮮やかに描き出す。

本作の公開にあたり、主人公・ユーイチを演じる峯田と、『アイデン&ティティ』“ガチ勢”で、『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』ではもう一人の主役、ユーイチが出会い衝撃を受けるバンドマン・モモを演じた若葉竜也へインタビューを実施した。

──映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の出演オファーが来たときの気持ちを教えてください。

峯田 僕は8年ほど前にトモロヲさんから「こういう映画をやりたいんだ」という話を聞いていて。そのときはコロナ禍で一度撮影が流れてしまったんですが、僕は今回のモデルになった東京ロッカーズをはじめ、パンクロックが好きだったし、トモロヲさんがこの映画に懸けている気持ちも伝わってきたので、「もし実現できたら、いい映画になりそうだな」と思って、すごく楽しみにしていました。

若葉 僕は峯田さんが主演された映画『アイデン&ティティ』が大好きで。「『アイデン&ティティ』が大好き」「峯田さんに会いたい」という話を、何年もいろいろな取材で数えきれないほどしてきたので「やっと辿り着いたか」という気持ちが大きかったです。

峯田 自分の部屋に、『アイデン&ティティ』のコーナーがあるんでしょ?

若葉 はい。初めて見たのは10代の頃、吉祥寺バウスシアターに自転車で見に行ってすごく感動して、その頃からグッズを集めて部屋に置いていました。今は当時の家には住んでいないんですが、リビングの片隅に当時の自分の部屋を再現するコーナーがあって、そこに『アイデン&ティティ』のポスターやSPEED WAY(劇中で峯田演じる中島が所属していたバンド)のTシャツ、グッズを入れるときの黄色い紙袋や、原作の本、DVDなどを置いています。

──“ガチ勢”だったんですね。

若葉 はい。

──ミュージシャンである峯田さんは、そんなバンドマンを撮影するカメラマン・ユーイチを、若葉さんは、ユーイチに撮影してもらうバンドのボーカル・モモを演じています。それぞれご自身の役柄をどのような人物だと捉え、どのように演じたのか教えてください。

峯田 僕はこの映画の話をもらうよりも前から、ユーイチのモデルとなった地引雄一さんの書籍「ストリート・キングダム: 東京ロッカーズと80’sインディーズ・シーン」を読んでいたんです。僕は1977年生まれで、この映画は1978年から始まる。だから東京で何が起こっていたかはリアルタイムで知る由もないんですが、自分がバンドをやるにあたって、ロックやパンクが日本でどう育っていったのかを、「ストリート・キングダム」などで調べていたんです。そういう意味では、昔から役作りができていたような気がします。

──カメラマンという職業や、写真を撮るということに対しては何か準備したことなどありますか?

峯田 それまで自分から写真を撮ることはあまりなかったので、ユーイチを演じることが決まってすぐに、地引さんが使っていたNikonのF2というカメラを買って、フィルムを巻く練習や撮影の練習をしました。自分のバンドのライブに持っていって、対バンがライブをしているときにステージ袖から撮ったりして。でも現像してみたら、絞りの調整がうまくいっていなくて真っ白でした(笑)。「ダメだこりゃ、ちゃんと撮影の練習をしないと」って思いました。

若葉 僕はそもそも役作りというものをほとんどやったことがないんですが、『ストリート・キングダム』の台本には、そのとき自分が考えて向き合っていたことがそのまま言語化されて書いてあると感じました。だから「当時の人たちもこういう思いだったんだ」ということを知ることができただけでもうれしかった。役としてしゃべることとは別で、本当に自分の中にあるものを吐き出すような感覚でした。

──言語化されていたと感じたのは、どういった部分だったのでしょうか?
若葉 ほぼすべて、ですかね。

──そもそもおふたりに面識はあったんですか?

峯田 撮影前に会ったのは1回くらいですね。『アイデン&ティティ』の公開20周年を記念したイベントに若葉くんが来てくれて。そこで紹介してもらって挨拶をしました。

若葉 僕はお客さんとして見に行っていたんです。紹介してもらったときに「サインください」って言いました(笑)。実はその前にも、一方的にお見かけしたことがあって。撮影スタジオの喫煙所で、「……峯田だ!」って思いました(笑)。呼び捨てですみません。「本物だ」ってチラチラと一方的に見ていたのが、僕にとっては最初の峯田さんとの出会いです。

──先ほどから何度かお話に出ている『アイデン&ティティ』と、主演の峯田さんをはじめ、田口トモロヲさん、宮藤官九郎さんなど共通点も多い『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』ですが、両作に共通していると感じる部分、あるいはまったく違うと感じる部分はどこでしょうか?

若葉 共鳴するところがあったかどうかは、もう少し冷静にならないとわからないんですが、自分の欲望としては、田口トモロヲ監督の最高傑作を作りたいと思っていました。青臭いかもしれないですけど。

──峯田さんはどう感じますか?

峯田 麻生久美子さんが出てないだけ(笑)。僕にとっては、トモロヲさんが「用意スタート!」って言ったら、もう毎回同じなんでしょうね。ただ、見ていて思ったのは「やっぱり僕が走っているな」ということ。もがきながら走っている。そこは『アイデン&ティティ』だったな。

──1978年の東京のパンクシーンを描いた本作が、2026年に公開する意味をどのように感じていますか?

若葉 自分の好きな映画って、ちゃんと現代の空気を映し出しているもので。『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』にも、現代にタイムスリップするシーンがありますが、そこが大きいんじゃないかなと思いました。フラストレーションなど、いろいろなことを溜め込んだ若者たちが、過去と現代でつながる。「懐かしいね」と言う映画じゃなくて、現代の空気みたいなものも内包して成り立っているということにすごく意味があると思いました。

峯田 あのシーンがあることで、今の若い人が見ても他人事じゃない気がすると思うんだよね。

若葉 本当にそうですね。

峯田 現代と比べて一番違うのは、やっぱりスマートフォンがないこと。限られている情報の中で、彼らが歯を食いしばってでもやりたいことは何なのか。それを描いた映画ですが、時代劇ではない。今言ったように、当時のシーンに関わっている人や音楽に興味を持っている人だけじゃなく、誰が見ても他人事に感じずにグッとくる映画になっているんじゃないかなと思います。

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■Profile

峯田和伸
1977年生まれ、山形県出身。
ロックバンド「GOING STEADY」として音楽活動を開始、その後バンド「銀杏BOYZ」を結成。田口トモロヲ監督の『アイデン&ティティ』(03)で中島役として映画初出演にして初主演。以降『少年メリケンサック』(08)、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(10)、『ピース オブ ケイク』(15)などに出演。またドラマ『奇跡の人』(16)では連続ドラマ初主演を務める。近年の出演作には、『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(19)、『越年 Lovers』(20)、映画『BAUS 映画から船出した映画館』(25)、舞台『雨の傍聴席、女は裸足…』(25)に出演するなど、歌手・俳優として活躍している。

若葉竜也
1989年生まれ、東京都出身。
2016年公開の『葛城事件』で、第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。2024年、テレビドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(KTV・CX)にて、第120回 ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞・助演男優賞、東京ドラマアウォード2024・助演男優賞、第49回 エランドール賞・新人賞を受賞。作品によって違った表情を見せる幅広い演技力で、数多くの作品に出演。近年の主な映画出演作に『前科者』(22)、『窓辺にて』(22)、『愛にイナズマ』(23)、『市子』(23)、『ぼくのお日さま』(24)、『嗤う蟲』(25)、『てっぺんの向こうにあなたがいる』(25)など多数。主演作に『街の上で』(21)、『ペナルティループ』(24)がある。

■Work Information

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
3⽉27⽇(⾦) TOHO シネマズ ⽇⽐⾕ほか全国公開
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ

©2026 映画『ストリート・キングダム ⾃分の⾳を鳴らせ。』製作委員会

峯⽥和伸 若葉⻯也
吉岡⾥帆 仲野太賀 間宮祥太朗 中島セナ
⼤森南朋 中村獅童

監督:⽥⼝トモロヲ
原作:地引雄⼀「ストリート・キングダム」
脚本:宮藤官九郎
⾳楽:⼤友良英
エンディング曲:「宣戦布告」(峯田和伸/若葉竜也)

Text:Chie Kobayashi
Photography:Madoka Shibazaki

Hair&make-up for Kazunobu Mineta:Ayumi Sugimoto
Styling for Kazunobu Mineta:Hiroaki Iriyama
Hair&make-up for Ryuya Wakaba:FUJIU JIMI
Styling for Ryuya Wakaba:Toshio Takeda (MILD)

撮影協力:新宿LOFT

峯田和伸:シャツ ¥66,000 / Sick (Sick @sick_shibuyatokyo)
若葉竜也:ジャケット ¥103,400・シャツ ¥48,400・パンツ ¥57,200・ブーツ ¥86,900 / Yohji Yamamoto POUR HOMME / ヨウジヤマモト プールオム(ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500), ベルト ¥24,200 / Y’s for men ワイズフォーメン