FTISLANDが4月25日の神戸からスタートした「2024 FTISLAND LIVE IN JAPAN “HEY DAY”」を6月9日の広島公演で完走した。これは昨年8月のソウルを皮切りに、マカオ、バンコク、台北、クアラルンポール、ジャカルタ、シンガポールと回ったアジアツアーの日本公演。日本では、兵庫、愛知、東京、大阪、広島で5公演を行った。普段は日本でリリースした楽曲で日本ツアーを回るFTISLANDが、韓国のセットリストで日本ツアーを行うのは長いキャリアながら初の試みとなる。また最終公演を行った広島は、前回ツアー時に日程調整の過程で急遽中止となった場所。「必ず戻ります」という約束を守り、この地でファイナルを迎えた。

FTISLANDは、イ・ホンギ(Main Vocal)、イ・ジェジン(Bass & Vocal)、チェ・ミンファン(Drums)からなる韓国出身のロックバンド。今回は海外公演のセットリストということで、韓国最新アルバム『Sage』全曲プレイが核になっていたが、なんと17年前の韓国デビュー曲「サランアリ」や、「Ft Island」、「Primadonna」など最近のライブで披露することのなかったデビューアルバムの懐かしの曲や、ミンファンのドラムソロコーナーが設けられた驚きの構成に。さらに日本のライブでは特別に、日本メジャーデビュー曲の「Flower Rock」と「Orange Days」が追加された。また、アンコールを行わない2部形式での公演というのも珍しい試みとなった。本稿では、5月6日の東京ガーデンシアター公演の模様をレポート。

オープニングの「シアワセオリー」からホンギはパワー全開で、会場はたちまち一体感に包まれる。「Falling Star」のサビから名曲「バレ」に続くメドレーから「Champagne ~ PUPPY」では、ファンも大きな声を上げて一緒に歌う。「そうそう、これこれ!」と思えるFTISLANDのライブ運びだ。「FREEDOM」では会場の全員と大ジャンプで盛り上がった。

「HEY DAYにようこそ!」と挨拶したホンギは、
「今日は韓国から始まったアジアツアーを日本に持ってきました!これは初の試みです。今までは日本オリジナルのアルバムを引っ提げたツアー、セトリでやってきたんですけど、“韓国のライブが見たい!”というPrimadonna(FTISLANDファンの総称)要望も多かったのでもってきました。これからは、韓国のセトリをもってきたライブも、日本オリジナルのセトリでするライブも、どっちもやっていきたいですね。そして、去年の秋ツアーでも言ったけど、FTISLANDの第2ページを作っていきたいという意気込みをこのライブを通して伝えたくて、僕たちのデビュー曲から最新曲まで様々な曲を通して伝えていこうと思います。」
と冒頭でこのツアーに込められたメッセージを伝えた。

「サランフエ」、そして韓国デビュー曲「サランアリ~チョンドゥン」を続けたが、「韓国デビュー曲「サランアリ」を日本で歌うのは10年以上ぶり。昔の曲含めて、俺ら。35歳のホンギが歌う17年前の曲はこういう色だと見せたい」という意思からだという。今のロックとはスタイルの違う、歌謡曲寄りのロックバラードも今となっては新鮮だ。「17歳の僕は、こんな別れの愛の話が理解できなかったけれど、大ヒットしてロックバラードのイメージができた。ロックがやりたかった僕らは、ロックバラードのイメージがイヤだった。でも時間がたった今は、この曲があったから、僕らは今、音楽ができていると愛するようになった。今は、どんな曲を歌ってもFTISLANDになる」と自信に繋がっているそう。

17年前の曲の後は、韓国最新アルバム『Sage』の曲「Not Enough」、「All Of My Life」を続ける。ホンギとジェジンのボーカルの対比が楽曲に深みを与え、ファンとのシンガロングでステージと会場がひとつになる。そして現在形のロックバラード「Wind」では、ホンギがスマホで客席を撮影しながらファンと一緒に歌う姿を映像に収めていだが、ちゃんと韓国語の歌詞を歌えるPrimadonnaもさすがだ。

1部の後半は、ミンファンの「DRUM SOLO」でスタート。重く正確なミンファンのドラムが会場を沸かせると、そこから力強いドラムが映える「Take Me Now」へなだれ込み、ハードロックパートへ突入。「Time To」の一体感でロックのパッションは最高潮を迎えた。

1部のラストを飾った「Sage」をホンギは、「HEY DAYのメインの曲。去年アルバム『Sage』を出して、いろいろなフェスに出られるようになりました。皆さんのおかげです。FTISLANDは自分たちの音楽を紹介するために、一緒に遊ぶためにいろいろな所に会いに行く。遊びに来てください」と紹介し、「一緒に「Sage」歌うか?」と客席に呼びかける。ジェジンの「Whoa,whoa,whoa,whoa」というコーラスが響くと、それをファンがシンガロング。そのコーラスと、ホンギの伸びやかな声が会場を包み込み、多幸感を与えてくれた。

しばしのインターバルをおいて、アンコール代わりの2部は、ジェジンとホンギがファンの手拍子に乗って歌う「Rising Star」からスタート。

「昨年末に韓国で開催したバラードコンサート『FTSODE』の曲や、日本では日本の曲を入れようと思ったら曲が増えちゃって……」と2部制の理由を語るホンギ。「最近、毎日音楽していて、本当に幸せ。去年、みんなに“音楽ばかりやる”、“僕らの音楽を見せる”と約束したけれど、その想いがフェス出演に繋がった。今年はそれが海外にまで拡がって、やればできると思えた。だから今年も、ライブばかりです。でも本当にそれが幸せ。この後はFNC BANDKINGDOMもあるし、日本のツアーもあるし、年末にアレ(FNC KINGDOM)も絶対あるでしょ(笑)。FNC BANDKINGDOMでは、ここでしか見られないもの見せる。FNCがバンドをやる意義を見せたい」と意気込んだ。

そして「最近は、韓国のアルバムを作っています。去年約束したことを守るためには、最近の僕らの色を出すのがいいんじゃないかと思っているので、ハードなエモコアっぽい曲になりそう。僕とジェジンは、『4月は君の嘘』という日本原作のミュージカルにも出ます。ぜんぜんピアノが弾けないのに、ピアノの天才の役(笑)」と近況を語るホンギから、「ドラムのミンファンが、一人でドラムのコンサートをやります」という衝撃の発表も! 当のミンファンは「ドラムを20年くらいたたいていますが、ドラマ―としてもっとFTISLANDの力になりたくて。一人でもできるって兄さんたちにも皆さんにも見せたい。バンドのドラマーが一人でライブするってあまりないけれど、自信がある。楽しみにしてください!」と抱負を語った。

2部の後半は、「韓国のデビュー曲をやったから、日本のメジャーデビュー曲も!」と、再びFTISLANDの歴史を振り返る。新しいイントロが加えられた日本メジャーデビュー曲「Flower Rock」から、ライブ定番曲「Orange Days」と、日本公演にだけ追加された曲をプレイして会場のテンションを上げる。歌い終わるとホンギは「久々に「Flower Rock」やったけれど、14年前を思い出すね。匂いがするというか……。それが音楽が持っている強いところ。だから皆さんに会うときは、記憶に残るものを作りたい。今日、僕らと一緒に遊んでくれて、ありがとうございます!」と改めてファンに感謝を伝えた。

最後はミンファンが「去年メンバーたちと、もっとライブをやって、今までの僕らを守りながら頑張ろうと約束したんです。今年、その約束がどんどん叶っています。ライブをしてきた中で、今年が一番幸せ。ありがとうと伝えたい。FTISLANDは、これから。30代は、実力も高まって花開く時期。これからも頑張っていくので、応援お願いします」と饒舌に語ると、ジェジンが「日本でのライブは、安心感がある。いろいろな国でライブをして忙しいけれど、FTISLANDとして、もっといい音楽、いい姿を見せると約束したから、その約束を守りたい。これからも僕らのいいところをいっぱい見せます。楽しみにしていてください」と熱い想いを伝える。そしてホンギが「やっと本来のFTISLANDに戻った気がする。去年はライブをしても“上手くやらなきゃ”と思って心が重かった。今年は、やんちゃに戻った気がする。今日はスッキリ遊んだ! ありがとうございました!」と最高の笑顔を見せた。

2曲を残し、「トリハダが立つ曲がまだ残ってる。最初のアルバムの僕らの曲と皆さんの曲。高校生の気持ちで歌うから、みんなも昔に戻ってこの2曲を一緒に歌ってください。そして、今日も無事に家にかえって、ビール1本飲んで、いい夢見よう!」と言うと、懐かしの「Ft Island」と「Primadonna」で会場中がハジけきった。

キャリア17年。彼らにマンネリなどという言葉はない。ライブを重ねるたびに、まだまだ成長している。そして夢を見て、前進を続けている。FTISLANDが海外で闘う様を日本でも見せてくれた「HEY DAY」。どこで何を演奏しても、FTISLANDはFTISLANDだと証明してくれたライブだった。

FTISLANDはこの後、7月13日・14日に幕張イベントホールで開催される所属事務所の夏バンドフェス「FNC BAND KINGDOM 2024」に、CNBLUE、N.Flying、Hi-Fi Un!cornと共に出演する。

Text:坂本ゆかり
Photo by Seitaro Tanaka