3月20日(金)より公開となる映画『東京逃避行』。
現代の歌舞伎町、とりわけ“トー横”と呼ばれるエリアを舞台に、行き場を失った若者たちが交錯する一夜を描く。秋葉恋によるオリジナル脚本作品で、実在の場所や社会的背景を踏まえながら、フィクションとして物語が構築されている。

SNSを介してつながり、歌舞伎町に身を寄せる若者たち。そこで描かれる関係性や選択は、特定の場所の出来事にとどまらず、いまの社会と地続きのものとして提示される。

本作で重要な役どころを担った綱啓永にインタビューを行った。自身とは距離のある世界をどう捉え、どのような姿勢で役と向き合ったのか。初タッグとなった秋葉監督との現場で感じたこととあわせて話を聞いた。

──『東京逃避行』は“トー横”が封鎖された後の歌舞伎町を舞台とした、秋葉恋監督によるオリジナル作品です。この脚本をはじめて読んだときの印象についてお聞かせください。

自分の知らない世界だけど、たしかに存在している。そんな世界が描かれていると感じました。この物語に登場する若者たちの気持ちがわかるのかと聞かれたら、正直なところわからない部分も多いです。僕自身すごく穏やかな環境で育ってきたので、その境遇がまるで違う。でも、このキャラクターのような人々が、今も歌舞伎町に身を寄せている現実があります。その事実の重さを強く感じました。

──ご自身から距離のある世界だと感じたそうですが、物語の世界との距離をどう縮めていったのですか?

どんな作品でもそうですが、真摯に向き合わなければならないと思いました。中途半端な姿勢での取り組み方では、伝わるものも伝わらないし、登場人物の全員に失礼だと。ちょっとこのあたりは感覚的な部分が大きいですね。

──あの場所で生きている人々に、本気で向き合おうとされたのですね。とはいえ、綱さん自身にとって遠くの世界であることに変わりはない。仕事とはいえ、そこに足を踏み入れていくことの怖さはありませんでしたか?

それはなかったですね。僕ひとりではなく、チームのみんなで挑んだテーマであり、作品だったので。ただ、物語の中心に立つふたりは、すごく大変だったと思います。背負わなければならないものがたくさんあるし、作品世界や演じる役に入っていけばいくほど、苦しい瞬間が相当あったはず。そばで見ていて、「大丈夫かな……?」と心配になることが何度もありました。そんな僕の前であのふたりが本当に素晴らしいお芝居をしているので、こちらもかなり感化されましたね。

──秋葉監督との初タッグの感触についてもお聞きしたいです。

可愛らしいし、格好いいし、おもしろいし、何より一緒にいて楽しい。いろんな一面を持っている人です。僕にはないものをたくさん持っていて、映画監督になるべくしてなった人なのだという印象がありますね。監督である以前にひとりの人間として本当に魅力的で、彼の頭の中をのぞいてみたいくらいです。そんな彼の真剣で全力な姿にもまた、僕は感化されていました。

──秋葉監督がつくる現場ならではだと感じたことは何かありましたか?

現場での監督のスタンスやスタイルは、人それぞれだと思います。そんな中で秋葉さんはいつも僕ら俳優たちのそばにいて、丁寧なコミュニケーションを重ねてくれました。“一緒につくっている”という感覚が強くありましたね。

──完成した作品をあらためて振り返って、『東京逃避行』はどんな作品になったと感じていますか?

この現実を世の中に提示することで、映画を観た方の視野が少しでも広がってくれたら嬉しい。そんなことを思っていました。センシティブな問題をいくつも扱っていますが、その舞台がたまたま歌舞伎町のいわゆる“トー横”と呼ばれるエリアなだけであって、今を生きる多くの人が共感できる要素が詰まっている。そういう作品になっていると思います。

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■プロフィール

綱啓永

1998年生まれ、千葉県出身。第30回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞しデビュー。2019年、特撮ドラマ『騎士竜戦隊リュウソウジャー』でメルト/リュウソウブルー役を務める。NHK夜ドラ『未来の私にブッかまされる!?』(24)、映画『女神降臨 Before/After』(25)、映画『ネムルバ力』(25)、映画『#真相をお話しします』(25)、映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』(25)や映画 『教場 Reunion/Requiem』(26))などドラマや映画を中心に活躍し、今、最も勢いのある若手俳優の一人。

■作品情報

映画『東京逃避行』
3月20日(金)テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか 全国公開
キャスト:寺本莉緒、池田朱那、綱啓永、高橋侃、松浦祐也、深水元基、さとうほなみ 他
監督・脚本:秋葉恋
©2025 映画「東京逃避行」製作委員会

Text:Yushun Orita
Photography:Yuri Inoue

Hair&make-up:YUDAI MAKINO(vierge)
Styling:MIYAKE TSUYOSHI

ジャケット ¥73,700 / エトセンス、パンツ ¥49,500 / エトセンス(エトセンス 03-6809-0470)、Tシャツ ¥22,000 / チノ(モールド 03-6805-1449)、その他スタイリスト私物