シンガーソングライターのコレサワが《コレサワ ワンマンショー 2024 コレシアター05》を東京・愛知・大阪・北海道にて開催。2024年12月19日(木)東京・昭和女子大学 人見記念講堂にて追加公演を実施した。《コレシアター》とは、2014年より不定期で開催している映像演出を存分に活かした映画のようなショーで、今回は約6年ぶりとなる。250人規模のライブハウスで第1弾を開催してから約10年。その間コレサワは数多くのタイアップを手掛け、このツアーも全公演がソールドアウトするなど躍進中だ。その成長を示すように、本公演は壮大なスケールとパフォーマンスで魅了した。

今回は、コレサワのキャラクター“れ子ちゃん”の秘密に迫るストーリー。定刻になるとブザーが鳴り、映画さながらに開演前の注意事項が流れる。そして、アートワークを手掛けるウチボリシンペが描き下ろしたアニメーションを上映。れ子ちゃんの体にはぽっかり穴が空いており、周囲から「変なの」「気持ち悪い」など心ない言葉を投げかけられてしまう。傷ついたれ子ちゃんは、穴を埋める方法を探す旅に出る――「君も一緒に来る?」というナレーションから、「シュシュ」でライブがスタート。コレサワはれ子ちゃんと同じうさぎのぬいぐるみを背負い、U(Dr)のドラムに合わせて足踏みをする。そんなコレサワとれ子ちゃんの姿、旅について描いた「シュシュ」の歌詞がリンクし、高揚感と切なさをかき立てる。

れ子ちゃんが旅の最初に見つけたのは“らぶ”。ここから「あたしが死んでも」など愛について描いた楽曲を披露していく。「みんな、こんばんはー! 今日は、私についてくる準備できてる? 一緒に旅をしましょう。レッツゴー!」という一言から、ライブ定番曲「あたしを彼女にしたいなら」へ。ひぐちけい(Gt)のキレのあるギタープレイが盛り上げる中、コレサワが観客を煽り、クラップや合いの手で会場の一体感を高めていく。SNSで流行中の「元彼女のみなさまへ」では、スクリーンにカラオケ風の歌詞つき映像が流れ、大合唱が起こった。

「実は今日、彼氏を連れてきたんだけど、紹介してもいい?」と犬くんを呼び込むと、コレサワは「あたし、あなたに言いたいことがあるの」と告げ「浮気したらあかんで」を歌唱。なかむらしょーこ(Ba)をはじめバンドが生み出すグルーヴに乗せ、コレサワと犬くんは仲睦まじい様子でステップを踏む。しかし、曲の終盤になるにつれ、演奏と共にコレサワの嫉妬も激化。犬くんにつかみかかるも、最後はなんとか仲直りした。「最終電車」では前回のコレシアターの参加者には懐かしい演出で《タクシー止まって》と歌う場面でステージ上にタクシーが登場。映像とリンクするようにコレサワがタクシーに乗り、ステージをあとにする。

ここで、ナレーションと共にスクリーンに再び映像が流れる。“らぶ”を見つけたれ子ちゃんは幸せな気持ちになったものの、穴はいまだに埋まらない。「それどころか 好きなのに傷つけてしまったり 信じられなくなったり 自分の嫌いなところを見つけてしまったりしたのです。あたしはただ もっと自分を好きになりたいだけなのに」――本当にプラネタリウムにいるかと錯覚するようなきらびやかな光が差し、衣装を替えたコレサワが登場。切ないバラードの「プラネタリウムに憧れた」、性急なビートに乗せた「いたいいたい」、音源とは違ったアレンジで躍動感のあるバンドサウンドで届けた「帰りたくないって」、カラフルなサウンドに合わせて客席に色とりどりのペンライトが灯った「彼氏はいません今夜だけ」と、恋の痛みや葛藤を描いたナンバーを披露していく。また、「さよなら恋人」では、コレサワを彼氏目線風にスマートフォンで撮影した映像が流れる。本公演ではアニメーションが演出の主体となっていたが、この場面だけは実写のコレサワの映像が流れ、切なさを誘った。

「失恋はとても悲しいけれど 少し強くなれた気がしました。だけどこの穴はまだ塞がりません。そして、れ子ちゃんは一人ぼっちになってしまいました」というナレーションのあと、コレサワがアコースティックギター弾き語りで「笑えよ乙女」を歌い上げる。観客も合唱し会場は温かな空気に包まれたが、歌い終えるとヒソヒソ声や「気持ち悪い」という言葉がこだまする。「やめて!」とコレサワは耳を塞いでステージから逃げ出し、スクリーン上のれ子ちゃんも涙を流した。すると、れ子ちゃんの持っていたうさぎのぬいぐるみが動き出し「かなしいことがあったの?」と寄り添う。れ子ちゃんが恐る恐る穴を見せると、そこにうさぎが飛び込み「ぼくがずっとそばにいるよ」と語りかけた。その後は衣装チェンジしたコレサワがステージに登場し、ミュージックビデオをバックに「憂鬱も愛して」へ。MVもれ子の穴の秘密に触れた内容となっていて、物語は核心に迫る。

心の“もやもや”かられ子を守りボロボロになったうさぎを抱いて、れ子ちゃんは「あたしがずっとそばにいるよ」と泣きながら語りかける。その優しさに触れたうさぎには羽根が生え、「ぼくはいかなきゃ またね」と飛び立っていった。そして、月に向かっていくうさぎの映像を背景に「Moon」を披露。シンセドラムやシンセベースを活かした雄大なサウンドに乗せ、コレサワは優しく繊細に歌を届けた。物語がクライマックスを迎えたところで、この季節限定でお披露目する「お願いサンタクロース」に。窓枠のイラストが映し出され、その外には雪がちらついている。下山明恵(Key)のキーボードの音色が荘厳に響く中、客席はペンライトで赤と緑のクリスマスカラーに染まった。

コレサワは「今年ももうすぐ終わっちゃうけど、みんなはどんな2024年を過ごしましたか?」と語りかけ「私は今年はとてもいい年だったなぁって思います」と振り返る。2本のツアーや多数のテレビ出演に加え、超ときめき♡宣伝部に提供した「最上級にかわいいの!」で日本レコード大賞の作詞賞を受賞するなど、今年はコレサワのキャリアを語るに欠かせない実りのある1年となったはずだ。そんな振り返りトークの最中、突然窓の外にサンタクロースが横切り、驚くコレサワ。サンタが現れたことを信じてくれないメンバーに対し、「寝たフリしたらサンタさんが来てくれるかもしれないからさ、寝る準備しようよ」と提案。メンバー全員でナイトキャップを被って消灯すると、足音が聞こえ、ステージにプレゼントが置かれる。窓の外には、役目を終えたサンタがうさぎに姿を変えて、夜空へ飛び立っていく様子が見えた。

プレゼントの箱には猫のぬいぐるみが入っており、コレサワも大喜び。「サンタさん、ありがとう!」と感謝して「にゃんにゃんにゃん」を演奏。コレサワと同じ猫のぬいぐるみを手にしたれ子は、「悲しい別れも 時には素敵な出会いに繋がっているのかも」「あたしは一人じゃないし つらい日々も楽しい日々も 愛していくと決めたんだった」と、前を向いて歩き出した。

ライブはエンディングに向かい、アッパーチューン「SPARK!!」で熱気が急上昇。さらに「SSW」で畳み掛けるが、演奏中に犬くんが乱入。結局、元カノと浮気をした犬くんだが、未練がましくコレサワが昔書いたラブレターを見せつける。「だぁいすきな犬くんへ」と書かれたその手紙は、客席から笑いが起こるほどの内容で、コレサワは恥ずかしさのあまり卒倒。演奏も中断してしまう。すると、スクリーンにRPGゲーム風の画面が映され「▶コレちゃんをたすける?/たすけない?」「▶どうやってたすける?」と観客に問いかける。パフェをあげたりペンライトを振ったりと手を尽くし、最後はファンの大きな声援により、コレサワが復活。「あんた、本当にしつこい犬ね! 私にはこんなに素敵なみんながいるんだから、早く私のことは忘れて、あの手紙はさっさと捨てなさい! 今までありがとう〜」とバズーカを打ち、元カレを追い返した。

コレサワが「みんな、いつも私に元気と勇気を与えてくれてありがとう! 座ってるとお尻も痛いし、そろそろ立ってみない?」と促し、観客は一斉に立ち上がる。「次はこの曲で、みんなに幸せをあげたいと思います。一緒に歌って踊ってくれますか? みんながこれからも、好きな人と好きなことをたくさんできる人生でありますように、そういう願いを込めました」と述べ、ラストナンバー「♡人生♡」へ。ピンクと銀のテープが舞い、さらにコレサワが客席に降りてファンの側で歌うなど、会場は幸福感で満たされた。

「何をしてもこの穴は塞がりませんでした。でもそれでいいと、れ子ちゃんは思いました。どんなあたしもきっと素敵だから。そう思えるようになったのは みんなのおかげだよ!」というナレーションと映像が流れ、エンドロールに。ウチボリシンペによるライブペイントが、観る者の心に温かな余韻を残した。

エンドロール後はコレサワ、メンバー、ウチボリシンぺが登場し、カーテンコールに。また、4thアルバム『あたしを選んだ君と あたしを選ばなかった君へ』を2025年3月19日に発売することと、5〜8月に全国18カ所を巡る自身最大キャパの《コレサワ LIVE TOUR 2025 あたしを選んだ君と行くツアー》を開催することを発表した。

これまで発表した曲を物語の文脈に乗せてパフォーマンスすることで、楽曲に新たな解釈を添えた本公演。そのストーリーはコレサワ自身の人生、そしてライブを見たファンそれぞれの人生とも接続するような内容となっていた。最後の挨拶でコレサワは「この《コレシアター》でみんなが何か大事なものを思い出してくれたり、感じるものがあれば嬉しいです。いつもみんなのおかげで…」と、感極まる。「みんな、ありがとね、本当に。すごくいいライブでした」と涙ながらに感謝の気持ちを伝え「頑張って新しい曲もたくさん書いてるので、ぜひ楽しみにしてください。そして、また元気で会いましょう!」と締めくくった。会場はこの日一番の拍手と歓声で溢れ、笑いあり涙ありの《コレシアター05》は幕を閉じた。

文:神保未来  撮影:小坂茂雄

セットリスト

01.シュシュ
02.あたしが死んでも
03.あたしを彼女にしたいなら
04.元彼女のみなさまへ
05.浮気したらあかんで
06.最終電車
07.プラネタリウムに憧れた
08.いたいいたい
09.帰りたくないって
10.彼氏はいません今夜だけ
11.さよなら恋人
12.笑えよ乙女
13.憂鬱も愛して
14.Moon
15.お願いサンタクロース
16.にゃんにゃんにゃん
17.SPARK!!
18.SSW
19.♡人生♡
エンドロール