石ノ森章太郎による人気SF漫画作品「サイボーグ009」を舞台化した舞台「サイボーグ009」。第一弾が2024年5月に上演され、このたび第二弾として舞台「サイボーグ009 -13番目の追跡者-」が11月に品川プリンスホテル ステラボールで上演されることが決定した。前作に引き続き、009/島村ジョーを演じる七海ひろき、004/アルベルト・ハインリヒを演じる里中将道、そして今作から登場する0013役の後藤 大に、互いの印象や「サイボーグ009」という作品の魅力について、語り合ってもらった。

──七海さん、里中さんは前作「サイボーグ009」から引き続きの出演となりますが、前作はいかがでしたか?

七海 本当に素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんと一緒にできたなと。製作発表からお稽古、本番までずっと本当に楽しくて。部活みたいな、充実した“青春”のような時間でした。

里中 わかります。チームワークがとてもよくて。

七海 その楽しさやチームワークの良さが全部舞台に乗って、すごく楽しかったです。

──すごく楽しかったと感じたのは具体的にはどんな部分でしょうか?

七海 メインキャストも、BG SOLDIERSの皆さんもみんなが何か……。

里中 元気ですよね。

七海 そうそう。

里中 パワフルなものを持っている人たちが集結しているし、ヒーローものなので気合いもひときわ入っていたように感じました。

七海 一人一人が、演者としても人間としても生命力があるし、キャラクターもしっかりしていて。そこから放つエネルギーがすごかったのかなぁ。作品によっては揃ったもので迫力を出すという場合もありますけど、このキャストたちはみんなが「個性が大事だ」と思っていて。その気持ちが合っているのも気持ちよかったです。

後藤 前作を観に行ったとき、終演後に挨拶させていただいたのですが、そのときに「なんて最高のメンバーなんだ!」って言いましたもん(笑)。そのときはまだ今作に出ることは決まっていませんでしたが、「僕もやりたい」と言いました。

──では実際に舞台「サイボーグ009 -13番目の追跡者-」に出演が決まっていかがでしたか?

後藤 前作を観たときに、楽曲、照明、その他全部から「サイボーグ009」の重量感が最初から最後までずっと心に残っていて。前回は0010を演じた2人が敵でしたけど、そのエモーショナルな結末にすごく感動したことを覚えていたので、お話をいただいたときは、すぐに「ぜひ」と答えました。

──せっかく御三方に集まっていただいたので、お互いの俳優としての印象や魅力をどのように感じているのか教えてください。まずは七海さんについて。

里中 共演したのは前作が初めてだったのですが、周りの男性キャストに負けずに体も鍛えて、アクションやお芝居も作っていて。そんな背中を見て、すごくカッコいいなと思いました。とにかくすごさを目の前で感じました。みんなを引っ張っていってくれる姿がすごくありがたかったです。今回もめちゃくちゃ楽しみです。

七海 褒められた!

後藤 僕は七海さんとは「演劇ドラフトグランプリ」と東洋空想世界「blue egoist」でご一緒して、今回で3回目。今回に限らず主役に立つ重圧は大きいだろうし、今回は「サイボーグ009」という昔から愛される作品なので、大きなプレッシャーもあって絶対に誰よりも大変なはずなのに、一人一人に気遣いをしてくださって。天性の真ん中に立って芸能をする方だなって、共演するたびに思います。「なんでそんなに欠点がないの?」「親はどういう育て方したの?」って。

七海 あはは(笑)。

後藤 それに僕は七海さんの歌が本当に大好きで。七海さんの内面の美しさがまっすぐに伝わってくるんですよね。ぶん殴られたような感覚になります。本当に大尊敬でございます。

七海 うれしい。二人ともありがとう。今日、もうこれで帰ってもいいくらい(笑)。

──いやいや、まだ帰らないでください(笑)。七海さんからもぜひお二人の印象や魅力を聞かせてください。まずは里中さんについて。

七海 とにかく性格が良くて。ちゃんと周りも見られていて、多くは語らないけど行動で示す“無言実行”みたいなところがとてもカッコいいし頼りになります。それが今回の役とも似ていて。

里中 ありがとうございます。

七海 動きも機敏で、今回また進化した姿を見るのも楽しみです。

後藤 僕はマサ(里中)と付き合いが長くて。お互いのいろんなところを知っているので、もう5時間くらい話せます(笑)。ものすごく純粋でまっすぐで素直で。一緒にお芝居をしているときも嘘がないんです。目に全く迷いがない。でも逆にすごく繊細な部分もあって。一見クールで何も気にしないタイプに見えるけど、一人でいるときはすごく考えている。そのセンシティブな部分も含めていい役者さんだなと思います。

七海 優しいもんね。

──では七海さん、里中さんから見た後藤さんの魅力をお願いします。

七海 最初にご一緒したのが「演劇ドラフトグランプリ」。そのとき一番印象的だったのは、セリフを一番に覚えてきていたこと。話を聞いてみると、最初の立ち稽古から割と覚えてくるタイプだと言っていて。その次にご一緒した「blue egoist」でもそうだったんです。それって影の努力じゃないですか。そういうものを当たり前にできるところがまず素敵だなと思いました。

後藤 うれしい。

七海 あと、人と真剣に向き合ってくれる温かい人だと思います。コミュニケーションがとりやすく一緒にやっていてとても楽しいです。「blue egoist」は近くにいるキャラクターだったから、一緒にいろいろ考えられて毎日楽しかった。

後藤 めっちゃうれしいです。

七海 まだ脚本を受け取っていないのでわからないですが(※取材は9月上旬に実施)、今回は役柄的に深く関わることが多そうなので、じっくりと芝居ができる気がして楽しみです。さっき大くんが里中くんのことについて「嘘がない」と言っていましたけど、2人ともそうだと思います。

里中 僕も大ちゃんと一緒で、大ちゃんのことは何時間でも話せます(笑)。ヒプステ(『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage)ではそんなに深く関わる役ではなかったので、初めて大ちゃんと舞台上でがっつり会話をしたのは「コブクロ JUKE BOX reading musical ”FAMILY”」。七海さんも言っていたように、ちゃんと言葉でキャッチボールができる俳優だなと思いますね。大ちゃんが言う言葉がしっかり刺さってくるし、芝居だけじゃなくてダンスも歌も柔軟さがあって「そうやってくるんだ」っていう一面もある。それに僕はプライベートも知っているのですが、自分と違うからこそプライベートでも刺激をもらうし、惹かれるところがたくさんあって、本当に大好きな俳優さんです。「サイボーグ009」で共演できるとは思っていなかったので、本当に楽しみです。絡みがあるかはわからないですが、あればいいなと思います。

後藤 そうだね。

里中 大ちゃんがどんな0013を演じてくれるのかすごく楽しみですし、最高の舞台をみんなで作っていけたらと思います。

後藤 2作目から入るって、ちょっと入りづらいところがあったりもするんですが。この「サイボーグ009」には全くそんなことを感じないんです。皆さんウェルカムなムードで。すごく楽しみです。

──原作も含めて「サイボーグ009」という作品自体の魅力を、皆さんはどのように感じていますか?

七海 「サイボーグ009」ってみんなサイボーグになってしまってはいるのですが、すごく人間ドラマだと思っていて。人の愛情とか苦しみ、悲しみというものが、敵キャラが出てくることでよりわかりやすくなっている。だから一番の魅力は人間模様、人間ドラマだと思います。

──その魅力を舞台上でどのように表現していきたいと思っていますか?

七海 島村ジョーという役をどういうふうに演じるかというのは、初演で掴めた気がしているので、今回はまた新たな気持ちで皆さんと作っていきたいと思っています。先日、先行体験製作発表でひさしぶりにみんなと会ったのですが、みんなこの衣装を着て立っているだけでその役として存在しているなと感じて。あとは豪さん(演出を手がける植木 豪)や、亀田さん(脚本を手がける亀田真二郎)をはじめスタッフの皆さんに任せて、自分は身を委ねるだけかなと思いました。

里中 七海さんが言ってくれたように、“人間の心を大事にしている”というのを一人一人から感じます。自分が演じるアルベルト・ハインリヒという役については、初演の前にいろいろ調べたので自分の中での形はありますが、また新たに向き合って、より人間味が落とし込めたらいいなと思っています。

後藤 僕も原作や漫画を見させていただいて、サイボーグだからこそ、それを人が見たときに感じる苦しさや希望を感じて。でも同時に、悲哀というか、その悲しみがロマンチックに見えるというか、その中に美しさも感じた。それが美しく舞台上で描かれていると思いました。それこそ海外で上演して、海外の方がどういう反応をするのかも見てみたい。それくらい誇るべき日本の作品だと思ったし、その作品に自分が出られるのもうれしいです。

──まだお稽古は始まっていないそうですが、0013という役をどんなふうに演じたいと思っていますか?

後藤 自分が0013に選ばれた理由を考えて演じたいです。それと、0013は言葉数が少ないキャラクターなので、セリフがあまりないかもしれないのですが、役者としての新たな表現をいろいろと探していきたいなと思っています。

里中 大ちゃんの演じる0013は素敵になりそう。0013も心が優しいから、そういうところでリンクするのかなって。

後藤 うれしい。

──七海さん、里中さんは、前作を踏まえてどのように演じたいと思っていますか?

七海 前作は私たち……特に私は、望まぬ改造から、「平和のために戦うんだ」っていう気持ちが変化していく姿を描いていましたが、今回はもう戦う気持ちになっているところから始まっているので、そのあたりは変わっていきそうだなと思います。

里中 確かに時間経過がありますよね。そのぶん、サイボーグのチームワークの良さや、009と一人一人の関係性もより見せられたらいいなと思っています。

──最後に、植木 豪さんの演出も本作の魅力ですが、演出面において楽しみなところや注目して欲しいところはありますか?

七海 豪さんの舞台は、最新の技術を駆使しているのですが、「意外とここは人間の持っているもので進めていくんだ」っていうところもあって。キャストの皆さんやBGの皆さんの持っている身体能力も全部使う。その、最新のものと、人間の力を掛け算しているところが豪さんの演出の魅力だと思うので、自分がそこについていけるように頑張りたいと思います。

文・取材=小林千絵
写真=Takahiro Kikuchi
ヘアメイク=瀬戸口清香、木村美和子

<公演概要>

【公演名】舞台「サイボーグ009 -13番目の追跡者-」  
【公演期間】2025年11月14日(金)~ 11月24日(月・祝)

【劇場】品川プリンスホテル ステラボール

【原作】石ノ森章太郎

【演出】植木 豪
【脚本】亀田真二郎

【出演】
009/島村ジョー:七海ひろき

001/イワン・ウイスキー:天華えま(声の出演)
002/ジェット・リンク:高橋駿一
003/フランソワーズ・アルヌール:音波みのり
004/アルベルト・ハインリヒ:里中将道
005/ジェロニモ・ジュニア:桜庭大翔
006/張々湖:酒井敏也
007/グレート・ブリテン:川原一馬
008/ピュンマ:Toyotaka

スカール:中塚皓平
0012:野々花ひまり
0013:後藤 大

アイザック・ギルモア:大高洋夫

[BG SOLDIERS]
HILOMU Dolton KENTA GeN 加藤貴彦 神谷亮太 佐久本歩夢 石田 創

※石ノ森章太郎の「ノ」の字は、約60%縮小が正式表記。

【舞台公式サイト】 https://cyborg009-the-stage.com
【舞台公式X】 @cyborg009_stage

【主催】舞台「サイボーグ009」製作委員会